こどもを守る「さるぼぼ」

飛騨高山のお土産屋さんやガイドブックで必ず目にする「さるぼぼ」。すっかり定番のお土産ですが、飛騨地域では、昔からこどもが健康に育つためのお守りとして大事にされていました。

飛騨弁で「あかちゃん」や「お人形」のことを、「ぼぼ」「ぼぼさ」と言います。今でも、親戚の赤ちゃんが生まれたという報せに対し、「ぼぼみに行こう」(赤ちゃんを見に行こう)というように使われています。

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飛騨地域では、江戸時代から「さるぼぼ」を作られていたといいます。お針子さん(大名などの衣服を仕立てる呉服所)は、裁縫の手始めにまず、「さるぼぼ」を作ることから学ばされたそうです。

日本では、奈良時代に中国から伝わった庚申信仰にちなんだ「天児(あまがつ)」を作る風習が生まれました。天児は、神事のお祓いに用いられた人形です。子どもにふりかかる災難を人形が負い、子どもを守ってきました。こどものお守り江戸時代以降、飛騨では人型から猿のかたちの「さるぼぼ」をつくる風習が定着し、こどものお守りとして民衆に伝わっています。

 

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何故、「さるぼぼ」が猿なのかという確かな文献は残っていませんが、猿は太古から、中国、インド、アフリカなどでは神聖な動物した。日本でも同様、猿は神様の使者として崇められていました。また、猿は馬を病気から守る動物として広く信じられ、厩で猿を飼う習慣があったことなどが文献で残っています。飛騨地域では、荘川で厩に猿の頭を祀る風習がありました。 馬を大事にしてきた飛騨では、馬の守り神であった猿も同様に大切にしてきたことが伺えます。

そして、言葉の音を大切にする日本では、「サル(猿)」と「去る」の語呂合わせから、災いを取り去る縁起物としても、猿を大切にしてきました。他にも、猿は安産で知られていることから、子宝・安産祈願の神様とも言われていました。

 

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近年では、風水にちなんで金、ピンク、黄色、緑、青など、様々な色の「さるぼぼ」がありますが、元来は赤のみでした。

医学が発達した今ではあまり聞かない病気「天然痘(てんねんとう)」が、江戸時代頃、日本で流行し始めています。強い感染力を持ち、特に免疫力の弱いこどもの致死率は高く、人々は「不治の病・悪魔の病気」として恐れ、天然痘を擬神化した悪魔を「疱瘡神(ほうそうしん)」と呼んでいました。疱瘡神は、赤いものが苦手だという言い伝えのもと、幼児の玩具は赤く彩色されていたそうです。「さるぼぼ」が赤い由縁もそこからのようです。

 

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もうひとつの特徴として、「さるぼぼ」には、目・鼻・口がありません。鏡のように、自分自身の心の状態がさるぼぼの顔に表れるようです。嬉しいときには「笑ったさるぼぼ」、悲しいときは「泣いたさるぼぼ」、人形も感情を持っていると信じて身につけていたのでしょう。

今ではお土産として商品化されている 「さるぼぼ」ですが、飛騨のこどもを守りつづけてきたシンボルとして今もこの地を守っています。

 

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