朴葉に包む飛騨のおいしさ

「朴(ほおのき)」は、飛騨に暮らす人にとって最も生活に近い植物のひとつ。モクレン科の落葉広葉樹で、日本の樹木の中では一番大きい花が咲くと言われています。夏、葉は最大約30センチ程になり、厚みも増します。秋には、葉の色は茶色に変わり、枯れて落ちます。

種から芽吹いたばかりの朴の木
種から芽吹いたばかりの朴の木

材の狂いが少ないため、家具や下駄の足に使用されます。また、戦後からの美術教育では、固いけれど掘りやすい特質を活かし、版画用板としても使用されてきました。

春に芽吹いた葉が茂りはじめる6月頃、飛騨の人は山へ朴の葉を取りに出掛けます。大きな葉を使用する朴葉寿司や朴葉餅を作るため。飛騨地域では朴葉をよく利用するので、家の庭や畑の隅で見かけることも少なくありません。

山から採ってきた青々とした朴葉に、ちらし寿司を挟んだ「朴葉寿司」や、つきたてのお餅を挟んだ「朴葉餅」は、暑さで腐りやすい食べ物の抗菌作用や防腐効果があるため昔から活用されていました。ちょうど、笹の葉寿司や柿の葉寿司、柏餅と同じ発想ですが、朴葉は飛騨独特の食べ方。葉のさわやかな香りも楽しめます。朴の「ほう」は「包」が語源であり、昔からものを包むのにも使われていたことがうかがえます。

また、大きさを利用して即席お皿代わりにも。使い終わったら即自然に返せるので、ゴミを出さない工夫にもなります。

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朴葉寿司
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朴葉寿司の具(鮭、山菜、錦糸卵、山椒など)

朴葉寿司は、朴の葉の上にすし飯をのせ、その上に下味をつけた鮭、生姜、椎茸、錦糸卵、きゃらぶき、山椒などを色鮮やかに乗せていきます。ご飯の中に具を混ぜ込む「混ぜ型」と、ご飯の上に具を乗せる『乗せ型』があり、地域によって乗せる具も変わるそう。

昔は、おにぎりにきなこと砂糖をまぶし、朴葉で包んだ‘朴飯’を田植えの時に持って食していた習慣があったそうです。

朴葉寿司を詰めたお弁当
朴葉寿司を詰めたお弁当

 

秋になると、青々していた葉は茶色に代わり落葉します。飛騨びとは、その落葉を拾い乾燥させ保存をします。お皿代わりに使用する以外に、朴葉の上に味噌をのせ、さらに 煮込みたいキノコや野菜をのせて焼く「朴葉味噌」も飛騨ならではの食べ方。郷土料理ではおなじみで、最近では飛騨牛を味噌の上で焼いて食べることもあります。

朴葉味噌
朴葉味噌

太古の人から受け継がれている自然と共に暮らす知恵。春夏秋冬、それぞれの季節にあった食べ方を楽しめます。地球にも生物にも優しいエコロジー。遠い未来へ受け継がれることでしょう。朴葉に包まれた飛騨の美味しさ、是非、ご賞味ください。